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千差万別!清酒の搾りの歴史と技術、その特徴

読者の皆様がお店で日本酒を手にする時、何を基準にして商品を選んでいるだろうか。コストパフォーマンスや銘柄など選ぶポイントはいくつかあるが、「搾り」の方法で選ぶという人は少ないかも知れない。そこで今回の記事では、日本酒を造る工程の1つ、「搾り」(上槽ともいう)にスポットを当てようと思う。

読者の皆様がお店で日本酒を手にする時、何を基準にして商品を選んでいるだろうか。コストパフォーマンスや銘柄など選ぶポイントはいくつかあるが、「搾り」の方法で選ぶという人は少ないかも知れない。

そこで今回の記事では、日本酒を造る工程の1つ、「搾り」(上槽ともいう)にスポットを当てようと思う。

Contents

1.清酒の「搾り」の歴史
2.「搾り」の方法と機器
3.おわりに

1.清酒の「搾り」の歴史

日本で麹が使われて酒が醸された最古の記録は、8世紀初めに書かれた「播磨国風土紀」に記されている。奈良時代には宮内庁で酒造りが行われ、製造法が発展したが、当時の文献には搾りの工程に関しては明記されていない。

時は過ぎ、室町時代、この時代に清酒の搾りに関わるムーブメントが起こる。朝鮮より綿袋が輸入され、醪を濾す「浄酒」が姿を現したのだ。清酒を濾す製法は画期的だったようで、15世紀末には綿花、綿袋の生産が開始された。1478年から1618年まで奈良の多聞院の僧によって書かれた「多聞院日記」には当時の清酒の上槽法が書かれている。

清酒の搾りは古来から、木でできた槽(ふね)に酒袋を並べ上から圧力をかけて搾るいわゆる槽搾りでおこなわれてきた。しかし、1963年、またもや清酒の搾りに関わるムーブメントが起こる。

薮田産業株式会社が「薮田式自動もろみ搾り機」、いわゆる「薮田式」を開発したのである。これにより、搾りにかけるコストと時間が大幅に減り、現在では酒蔵の約8割はこの方式を採用している。

現代、上記のとおり酒蔵の約8割は「薮田式」を採用しているが、商品の差別化などの観点から槽搾りをはじめ、様々な搾りを実施している酒蔵がある。では、様々な搾りとはどんなもので、どのような特徴があるのか、紹介していこう。  

2.「搾り」の方法と機器

1) 薮田式自動もろみ搾り機 

最も一般的ともいえる搾り機による圧搾方法。薮田式は、アコーディオンのような凹凸に200枚挟まっている構造で、蛇腹状の部分に醪を流し込み、バルブを閉じ圧縮空気を送り込み、醪を圧力によって搾る構造になっている。

利点  

・袋に醪を充填しなくていいので、搾りにかけるコスト、手間が省ける。
・比較的短時間で搾ることができる。
・他の搾り方法に比べて、清酒の収量が多くなる。
・圧搾中に醪が空気に触れにくく、醪の酸化が起こりにくい。 
 

欠点  

・他の搾りに比べ強い圧力で搾るため、比較すると雑味が出やすい。
・粕剥がしが大変

2) 槽搾り

古来より伝わってきた伝統的な搾り方法。槽(ふね)と呼ばれる道具に醪を充填した酒袋を並べ、上から重石などで圧力をかけ圧搾する方法。株式会社昭和製作所がリリースしている「佐瀬式」搾り機がこの方式に該当する。 
  

また、酒蔵によっては、昔から受け継がれてきた槽や圧搾システムを用いている。
(都美人酒造の天秤の画像)

利点  

・薮田式より優しい圧力で搾るため、雑味の抑えられた仕上がりが期待できる。
・比較的、粕剥がしが容易。

欠点  

・薮田式と比較して、粕歩合が高く清酒の収量が低い。
・酒袋に醪を充填しなくてはならないため、労力と時間を要する。
・搾り終わるまでに時間がかかる。
・酒袋をしっかり洗わないと、清酒に袋香が移る。

3) 袋吊り

昭和30~40年ごろ誕生した手法で、現在では鑑評会出品酒に多く採用される手法となった。醪を充填した酒袋を吊るし、そこから自然に流下した清酒だけを集める。斗瓶取り、袋取り、雫取りとも呼ばれる。

利点  

・無加圧で搾るので、繊細で綺麗な味わいの清酒となる。

欠点  

・清酒の収量が極端に少ない。
・自然流下のため、搾りに長い時間を要する。
・酒袋にいれたまま醪を長時間放置するため、しみだした清酒が酸化してしまいやすい。

4) 遠心分離

平成17年に遠心分離機メーカーである株式会社コクサンが特許を修得した新しい搾り方法。醪を遠心分離器に充填し、高速で回転し遠心力によって搾る。搾った後は清酒、糊、酵母、酒粕に自動的に分離される。

利点

・遠心力で搾るため無加圧で搾ることができ、繊細で綺麗な味わいとなる。
・酒袋を使わないため、袋香が付かない。
・密閉された空間で搾るため、吟醸香が揮発せずに清酒中によく残る。

欠点

・清酒の収量が極端に少ない。
・機械が約2000万円と高価なため、手が出しづらい。

5) 笊籬(いかき)採り

「風の森」の醸造元である油長酒造が室町時代から江戸時代にかけての酒造文書資料にある「笊籬(いかき)」という清酒造りからヒントを得て開発した技法。もろみ中に笊籬状(ザルのようなもの)のスクリーンを沈め、もろみと清酒を分離する技法である。

利点

・ほぼ無加圧で搾るため、繊細で綺麗な味わいとなる。
・酒袋を使わないため、袋香が付かない。
・密閉された空間で搾るため、吟醸香が揮発せずに清酒中によく残り、醪が空気に触れないため、清酒が酸化しにくい。

欠点

・現時点でノウハウを油長酒造さんしかしらないため、新規参入が難しい。
・現時点では機械が特注だろう。

3.おわりに

酒造りにおいて、「搾り」は地味に見えて奥が深い。近年では薮田式にとどまらない製品も数多くあり、今後の動向も気になるところだ。日本酒のファンの皆様も、ぜひ搾りの違いで日本酒を楽しんでみてはいかがだろうか。

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