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「遺伝子組み換え酵母」について考える

酒類で言えば、日本酒メーカーならお米を連想するかもしれないし、ビールメーカーなら大麦などを想像するかもしれない。近年、世界各地では酵母を始めとする微生物の遺伝子組み換えが研究されており、自然で発展してきた種とは全く違うような現象や行動を起こす微生物を開発している。今回の記事では、人間の手によって開発された遺伝子組み換え酵母を例にとって、遺伝子組み換えとはどのようなものなのか、どのような能力があるのかを紹介する。

「遺伝子組み換え」と聞くと、多くの人は穀物や野菜を想像するのではないだろうか。

酒類で言えば、日本酒メーカーならお米を連想するかもしれないし、ビールメーカーなら大麦などを想像するかもしれない。近年、世界各地では酵母を始めとする微生物の遺伝子組み換えが研究されており、自然で発展してきた種とは全く違うような現象や行動を起こす微生物を開発している。

今回の記事では、人間の手によって開発された遺伝子組み換え酵母を例にとって、遺伝子組み換えとはどのようなものなのか、どのような能力があるのかを紹介する。

1.「遺伝子組み換え」とは?

遺伝子組み換えとは英語ではGenetic Modification、つまり遺伝子操作である。

自然の中でも遺伝子は変化していくが、この技術は人為的にたとえばクモの遺伝子をヤギにとか、魚の遺伝子をトマトにとか、バクテリアの遺伝子を大豆になど、自然界で起こらない遺伝子操作を強制的に行うものである(他の生物の遺伝子を組み込まず、RNA-iと呼ばれる方法で特定の遺伝子を抑制する遺伝子操作も含まれる)。

2.遺伝子組み替えの手法

遺伝子組み替えの手法として有名なのは、「アグロバクテリウム法」と呼ばれる手法だ。

アグロバクテリウムは土の中にいる細菌の一種で、自分の遺伝子を植物の中に組み込む能力を持っている。その能力を担うのは、アグロバクテリウムの「プラスミド」と呼ばれる部分(遺伝子の一種)だ。

まずアグロバクテリウムの中からを「プラスミド」を取り出す。それを目的の遺伝子につなげる。(遺伝子を切ったり貼ったりするには酵素を使う)それをアグロバクテリウムの中に戻す。アグロバクテリウムを植物に感染させることで、プラスミドに運ばれて目的の遺伝子が植物の中に送り込まれ、遺伝子操作が完了するという方法だ。

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3.酵母への応用事例

他の生物の遺伝子を組み込む手法を、酵母のような微生物に応用するとどうなるのか。実際に開発された「遺伝子組換え酵母」を例にとって説明しよう。

1) マロラクティック発酵酵母「ML01株」

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アメリカのブリティッシュコロンビア大学が開発した酵母で、Saccharomyces cerevisiaeをベースに、Schizosaccharomyces pombe由来のリンゴ酸輸送遺伝子(mae1)と、Oenococcus oeni由来のマロラクティック発酵(リンゴ酸を乳酸に変化させる発酵)遺伝子(mleA)を組み込んだ酵母である。

これにより、この酵母を使用するだけでアルコール発酵とマロラクティック発酵を同時に行える上、Oenococcus oeni由来の頭痛を引き起こす物質を出さないという利点がある。アメリカでは、正式に使用を認めているワイナリーはほぼ無いが、実際に実用されている遺伝子組み替え酵母である。

2) エタノール高生産酵母

マサチューセッツ工科大学の研究チームが開発した遺伝子組み替え酵母。エタノールの生産スピードが高い上にエタノール、グルコース両方の濃度上昇に耐性がある。食用の研究ではなく、燃料用のエタノールとしての研究だが、応用すれば酒造にも利用できるかもしれない。

4.遺伝子組み替えのデメリット

このように、遺伝子組み替えの微生物は自然界ではあり得ないような性質を持ち、さらに研究が進み実際の現場で使えるようになったら革命的な技術革新といってもいいのかもしれない。

しかし、ここで忘れてはならないのが「遺伝子組み替えによるデメリット」である。「遺伝子組み換え」と聞くとそれだけで悪い印象を持つ人も多いかもしれないが、正確な知識をもって遺伝子組み換えを問題視している人はごく少数だろう。そこで、一般的に言われている遺伝子組み換えのデメリットを以下にまとめてみた。

・健康に害を及ぼす物質が生成される可能性がある。
→他の生物の遺伝子を組み込むとき、同時に「プロモーター」と呼ばれる遺伝子を働かせる物質を組み込む。それの影響で、通常では動かない、目的の遺伝子ではない遺伝子が働き有害な物質を発生させてしまう可能性がある。(食用として認可されている遺伝子組み換えの食物は厳しい審査がなされていて有害物質の危険性はない)

・生態系に変化をもたらしてしまう。
→人為的に遺伝子を組み込んだ生物が自然に放たれてしまうと、既存の生物との争いなどが起きたりして生態系に 変化をもたらしてしまう可能性がある。

5.おわりに

遺伝子組み換えは革命的であって、それ故に人類が深く考えなくてはならない問題である。私たちはこの技術とどのように共存すればいいのだろうか。今後の研究と共に、世界の認識の動向にも注目していきたい。

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